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神戸地方裁判所 昭和61年(わ)1071号 判決

本籍及び住居

大阪府堺市小阪五八七番地

農業

藤原初男

大正三年六月五日生

本籍

大阪府堺市石津町一四五五番地

住居

同市陵西通二番三三号

不動産仲介業

谷口渉

昭和二三年一月一日生

右両名に対する各所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官高田明夫出席のうえ、審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人藤原初男を懲役八月及び罰金六〇〇万円に、被告人谷口渉を懲役六月及び罰金一四〇万円に処する。

被告人両名に対し、本裁判確定の日から二年間それぞれその懲役刑の執行を猶予する。

被告人らが右の罰金を完納することのできないときは金四〇〇〇〇円を一日に換算した期間それぞれその被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人藤原初男は大阪府堺市深阪一〇三五番二ほか二筆の土地(田)合計一四二九平方メートルを所有していたものの、被告人谷口渉は、不動産仲介業を営んでいるもの、分離公判前の相被告人環秀雄は、部落解放同志会大阪府連合会本部理事長をしているものであるが、被告人藤原及び同谷口は右環と共謀の上、被告人藤原が所有する右土地を昭和五八年三月一四日に一億三一〇四万円で売却譲渡したことに関して、右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、被告人藤原の実際の五八年分分離課税による長期譲渡所得金額は一億一八八四万八一三〇円でこれに対する所得税額は三〇三二万一八〇〇円であるにもかかわらず、右環の知人である泉谷繁蔵が伍用清一から八〇〇〇万円を借入れ、その債務について、被告人藤原が連帯保証人となり、その連帯保証債務を履行するために右土地を譲渡し、その譲渡収入で昭和五八年三月三〇日に元利合計九五〇〇万円を支払ったが、右泉谷に対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどし、同五九年二月二五日、同市南瓦町二番二〇号所在の所轄堺税務署において、同税務署長に対し、被告人藤原の五八年分分離課税による長期譲渡所得金額は一四三一万一三〇円で、これに対する所得税額は二六七万三二〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右の正規の所得税額三〇三二万一八〇〇円との差額二七六四万八六〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人藤原及び同谷口の当公判廷における各供述

一  第一回公判調書中の被告人藤原及び同谷口並びに分離公判前の相被告人環の各供述部分

一  被告人藤原(六通)及び同谷口(六通)の検察官に対する各供述調書

一  分離公判前の相被告人環の検察官に対する昭和六一年一一月一日付、同月一一日付、同月一二日付、同月一五日付、同月一七日付、同月一八日付及び同月二二日付各供述調書

一  植野和子、清一照一、藤原武平、伍用清一、浜田百々代、奥平康子及び久次米昭(同月一五日付)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲第一九一号)、証明書(同第一九二号)及び各査察官調査書(同第一九三号ないし第一九七号)

(法令の適用)

一  判示所為刑法六〇条、所得税法二三八条一項(被告人藤原につき、所得税法二三八条二項を、被告人谷口につき、刑法六五条一項を各付加)

一  刑の選択(被告人両名につき)

いずれも懲役刑と罰金刑を併科

一  執行猶予(被告人両名につき)

刑法二五条一項

一  労役場留置(被告人両名につき)

刑法一八条

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 東尾龍一)

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